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« 11月14日教科書関係報道 | トップページ | 文科大臣の不当な「是正要求」に屈することなく事実経過の検証を »

2013年11月14日 (木)

八重山地区教科書採択問題における文部科学省の不当な介入に対する抗議声明

2013年10月21日

 

文部科学大臣 下村博文 殿

                  沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会

                               (略称 平和教育をすすめる会)

 

    八重山地区教科書採択問題における文部科学省の不当な介入に対する抗議声明

 

 本年10月18日、下村博文・文部科学大臣は地方自治法245条に基づく「是正要求」を沖縄県教育委員会に向けて発出し、竹富町教育委員会が中学3年生の公民教科書の採択を石垣市および与那国町と同一のものとしていないのは違法であるとの解釈を前提に、竹富町教委に採択の変更を迫るように、県教委に要求する行為に踏み切った。さらに、下村大臣は「是正要求」発出時の記者会見やその後の講演等を通じて、いかにも竹富町教委が違法行為を重ね、文科省等によるこれまでの指導などにまったく応じなかったかのような、明らかに事実に反する説明を繰り返している。われわれは、八重山地区教科書問題について関心を持ち続け、事態の1日も早い正常化を強く望んできた立場から、こうした状況について看過してはならないと考える。

今回の「是正要求」に至る不正常な状態の出現と継続の主たる原因が、教科書採択権は個々の教育委員会にあるとされている地方教育行政法と複数の教委による共同採択地区では同一教科書の採択が無償措置適用の必要条件であるとする教科書無償措置法との間に齟齬が生じている点にあることは、遅くとも2011年8月の時点で広く知られているところであった。しかも、当該3市町教育委員の全員協議会が開催された2011年9月8日の当日まで、これら2つの法律の規定のどちらが優先するのか、との石垣市教育委員会などからの問い合わせに対して、文科省教科書課は「どちらかが優先するという関係にはない」と回答していたことが、確認されている。これは、上記の齟齬の存在を暗黙のうちに文科省が認め、さらにこれら2つの法律の間には一般法と特別法という関係が存在しないと、認識していたことを意味している。同時に、この時までは共同採択地区内の教育委員会間で採択希望の差異が生じても、協議の繰り返しによって採択の一本化が実現して事なきを得たこれまでの複数の事例を念頭に、文科省教科書課との緊密な連絡を維持した沖縄県教育委員会が再協議に向けた助言と指導を進め、その趣旨の下に全員協議会が開催されたのであった。

しかし、9月8日の全教育委員による協議の最中に届いた義家弘介・自民党参議院議員(当時)からのFAX文書を石垣市教育長が突如掲げ、石垣市教育委員会としてはそれまでの採択を一切変更しないとの強硬方針を表明し、再協議による全教委一致の一本化を事実上不可能にした。やむをえず、全教育委員による協議会は長時間の協議の上、最終的には全出席者による多数決で、八重山地区は東京書籍版を採択するとの議決をした。これは、助言・指導に当たった県教委も一本化の結論として認めたものであった。にもかかわらず、この議決に対して、石垣市と与那国町の教育長が承服できない旨の文書を独断で県教委と文部省に提出し、石垣市教育長は自由民主党の教科書議連等の9月13日の会合に招かれ、強硬姿勢を維持するように激励されたことも、事実として判明している。

こうした自由民主党などによる政治的な介入の下で、中川正春・文科大臣は9月8日の議決を正当なものとは認めないとの見解を、採択結果報告期限の数日前に表明し、事態の混乱に拍車を掛けた。さらに中川大臣は、10月26日の国会答弁において、石垣市と与那国町には無償措置法を適用し、竹富町には同法を適用しないとの方針を明らかにした。そこでの判断の根拠とされたのは、採択協議会の答申通りの採択をしているかどうかであった。しかし、協議会の答申に拘束力がないことは文科省が従前から認めていた。その自らの見解に反する解釈と運用を文科省は強行したことになる。

さらにこの結果、竹富町では篤志家が購入した東京書籍版公民教科書の現物寄付を教委が受け、それらを生徒に渡すことで、2012、2013年度の授業を実施するという異常事態が生じている。これは、義務教育課程の教科書は無償とする教科書無償法に違反しているものである。

このような事態になったのは、無償措置法が定める共同採択地区内での採択一本化が3市町間では実現できていないにもかかわらず、文科大臣が石垣市と与那国町の分だけを無償の対象とするという法規の恣意的・便宜的な解釈と運用を強行したことに起因している。こうした法規の恣意的・便宜的な解釈と運用による行政権限の行使は職権濫用であり違法であるとする司法判断が、最高裁判所の判決(1997年8月29日、第3次家永教科書裁判)で確定している。今回の「是正要求」で文科大臣は、竹富町が無償措置法の採択一本化の規定に違反しているとしているが、その規定の解釈と運用を歪めている文科大臣の行為こそ、違法である。

さらに文科省は、この違法な法規解釈を糊塗するために、国会議員からの質問趣意書への回答文にことよせて、地方教育行政法は一般法に該当し、教科書無償措置法が特別法として前者に優越する関係にあるとの新たな見解を10月7日に明らかにした。変更後の見解によって、竹富町は地教行法よりも無償措置法に従うべきだとする文科省の主張の根拠がより強固になったかのようにも見える。しかし、これは異常事態の進行中に法規の解釈を突然変更したもので、この変更自体が前出の最高裁判例に抵触する違法行為である。いわば、スポーツの試合中に形勢が不利になったためルールを一方的に変更したようなもので、後出しジャンケン同然の卑劣で反社会的な行為である。

 しかも無償措置法が特別法として優越するという見解は、文科省によるその場凌ぎのものでしかない。そのことを、今回の10月18日の「是正要求」発出直後の記者会見と19日の講演において下村大臣が法改正に言及したことで、明白となっている。同大臣は、繰り返して今回の件で広く知られることとなった2つの法律の規定間の矛盾を解消するために、無償措置法の規定が優越することを明記するための法改正を目指す旨を明らかにした、と報道されている。「是正要求」の発出という異例の措置に世間の関心が集中している間に文科省の最大の弱点を取り繕うとする行為であり、この不公正さを、われわれは見逃すわけにはいかない。

 加えて、今回の「是正要求」が地方自治法245条に基づいて発出された点でも、文科省は新たな違法行為を重ねたことになる。地方自治法の規定は総務省が管轄する地方自治体の行政行為を対象とするものであり、文科省の教育行政に於ける「是正要求」については、地方教育行政法49条に別途の規定がある。「是正要求」に関しては、地方自治法245条が一般法であり、地教行法49条が特別法であるという関係にある。従って、文科省が「是正要求」を発出するには後者の規定に即したものでなければならない。しかし、文科省はその法秩序を無視して、一般法の地方自治法のみを根拠として、行政権限を行使した。竹富町の実情が地教行法の規定にある発出条件に合致していないと、2012年8月28日の参議院文科委員会で、当時の平野文科大臣が明らかにしていたために、便法を用いることにしたものだ。これは明らかな法規の恣意的・便宜的な解釈と運用であり、先の最高裁判決に言う違法行為そのものである。

先の記者会見で下村大臣は、「法治国家ですからルールはきちっと守っていただきたい」と繰り返し強調している。文部科学省と自由民主党こそ、法規の不備を長年放置してきただけでなく、一昨年来の八重山教科書問題においてさえ数々の違法行為を重ねている事実が今明らかとなっている。この期に及んでもなお自らの違法性を隠し、文科省も合法性を認めた行為を実行しているにすぎない竹富町が違法自治体であるかのようなイメージを全国に広めようとする下村大臣の言動は、到底容認できない。

これまでにも、沖縄県民は日本政府から差別的、屈辱的な措置、権力行使を数多くされてきた。今回の「是正要求」もそれらと同様に、沖縄県民の誇りを傷つけ、屈辱感を新たにさせるものであり、容認することは断じてできない。

我々は、沖縄県民の誇りをないがしろにし、沖縄の民主的な教育の実践と継承を脅かすものとして、10月18日の「是正要求」発出に対し強く抗議し、「是正要求」を即時撤回することをここに求める。

                                     以上

 

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